東北の工務店が函館のZEHを視察 東京大学の前先生の講演も

先日13日、石川町の当社モデルハウスもある函館e-housingのZEH団地に、東北の工務店の方々が視察に参られました。その後、会場を函館テクノパークに変えて前先生の講演会が開催されました。

前先生は、東京大学工学系研究科 建築学専攻の准教授で、建築環境を専門としておられ、「目下の最重要課題は、暖房や給湯にエネルギーを使わない無暖房・無給湯住宅の開発ですが、およそ環境に関わることには大概興味を持っています。」という方です。

今回の講演の前に、ZEH団地にて「PMV計」というドイツ製の測定器をお持ちになり各モデルハウスを測定なさっておりました。先生自らつなぎを着て、床下まで潜っていました。

講演会は、一般社団法人北海道ビルダース協会事務局長、大柳桂紀氏のあいさつのあと、われらが函館e-housing代表の渋谷建設(株)代表取締役、渋谷旭氏の「函館ZEH団地概要説明と函館e-housingの歩みと取組」から始まりました。

前先生の演題は「函館ZEH夏・冬検証結果から見えること 道内でのZEHはどうなるか・・・」で、2020年には、経産省ZEHが当たり前になるのかと問いかけ、ゼロエネルギーの意味や経産省ZEHの最近の動向を話してくださいました。

その中で、「役所がZEHを扱うとどうしてもUa値がいくらといった数字に執着してしまうが、Ua値は目標にあらず、室温変動を予測し温熱環境とコストのバランスを最適化しよう!」と、ともすればUa値競争に走りがちな状況に警鐘を鳴らします。

また、少し前までは、あまり好ましくない設備が使用されていたけれども、最近の設備性能の状況をみると「これ以上の性能のアップとしては、もう球がない。」とおっしゃられ、以前の電熱線電気ボイラーがヒートポンプに、エアコンも寒冷地向けとして大幅な能率がアップされ、ペアガラスがトリプルや真空ガラスになってきた状況は、これからは性能の向上としてはそれほど見込めないと説明されました。

「あとは、設計力やソフトウェアの問題」と話し、「温熱の快適性は、「全身の熱バランス」+「局所不快感」で決まる」と温熱環境を極めることが大事と語られ、同じ省エネ機器を使用しても、設置の仕方、運転の仕方で温熱環境が変わり、同じ室温でも不快に感じることに注意して設計をと話されました。

そして、今後の設計の重点の一つとしてPMVの指標を提案されました。人は、いつも体表から熱を放出しており、「適切な体表面温度で放熱できるかがカギ」と先ほどのPMV計について詳しく説明されました。

PMVは、室内の風速、グローブ温度、温度・湿度を計測して人の代謝量と快適時の放熱量のバランスを表す指標で、PMVが0の場合5%の人が不快と感じ、±2.0だと80%の人が不快に感じるのだそうです。

ただし、人は暑さは脳で感じ寒さは皮膚で感じるのだそうで、運動していると活動量が大きくなり体深部温度が高く、皮膚は、発汗により温度低下していても適度にバランスがとれていれば快適で、安静時は逆に、体深部は暑くなく、皮膚も寒さを感じないでバランスがとれていれば快適に感じるとのことでした。

また、最適温度も、同じ人間でも、活動しているときと安静時は当然違っていて、これに対応するために寒さを感じる時は服多く着るなど着衣量で調整が必要と話されました。

室内温度の分布は、当然各部で差が少ないのが理想で、特に上下、足元と頭部の室温の差異は不快に感じるもので、上から冷房下から暖房の基本と、設備の設置だけでなく、吹き抜けや階段を利用した計画が重要と話されました。

そのうえで、いつも活動をする台所とリラックスする居間とは、同一空間でも若干の温度差を作る必要も時にはあるのかなとおっしゃっておりました。

先生の広島のご実家では、ポータブルストーブ1台のそばで暖を取られていて、室内の温度分布が極端に差異があってもそれなりに過ごせるのは、ストーブの周りが、住宅が無断熱・無気密でも部分的にPMV≒0の空間が作り出せている。とおっしゃってましたが、昔はどこの家も、ストーブ側は顔まで暑いけど背中は寒いってよくありましたよね。今じゃ考えられないけど・・・

それで最後に、各モデルハウスの測定結果を発表してくれましたが、全棟PMV≒0で各室の温度分布もほぼ均一と前先生からお褒めの言葉をいただきました。エヘン!(咳ではありません)