「浴槽が冷たい」と父が・・・断熱・気密が不十分なら「気流止め」が必要

ポカポカした暖かい日が続き、春眠なんとやらのゼッツです。

昔、父がまだ元気だったころ「浴室(UB:ユニットバス)は暖かいし、お湯もいい加減だが、浴槽に入ると浴槽が冷えている。」と言っていたことがありました。

これは、当時の家は当然ZEHとかではありませんでしたが、外壁16K100ミリ天井ブローイング300ミリ、そして床下断熱で150ミリのグラスウールが入っていて、床下は外部と同じという考えのものでした。ですから、UBの下側にもグラスウールを入れるなりすればよいのですが、なかなか知人の大工さんには文句が言えません。

 

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その時は「床下換気口を閉めたかい?」というと「そうか、忘れていた。」と納得していましたが、後年その家を譲り受け改修したときには、基礎断熱として基礎も外壁も押出ポリスチレンフォーム板の付加断熱と高気密施工をしました。

その気密測定の時、十分に注意したはずの基礎部の気密が一部良くなくて大工さんが床下に潜って土台と基礎の隙間のシールの不完全なところを直していました。

その家を建てた当時は、土台を乾燥させるため土台下に基礎パッキンというものを敷いて風を通すようにしていたのでした。つまり、床下換気口を閉めても床下は、空気がスースーだったのです。

ZEH、ゼロエネハウスは、やはりその施工にポイントがあります。うちの会社は、その問題を2×4工法を採用することで確立していますが、ZEHビルダーとしてゼロエネ住宅の普及をめざしている以上、旧在来工法で建てられた住宅のZEH改修は使命でもあります。

旧在来工法で建てられた住宅をゼロエネルギー化するには、サッシなどの高能率製品への取り換えだけでなく、いかに住宅の気密を上げるかがポイントになってくるようです。

旧在来工法は、間仕切り壁の上部の梁まで柱や間柱が伸びているため天井面の間仕切り部分で隙間が空いています。ですが、この欠点を補いつつ従来の大工さんでも対応できるよう工法を工夫したのが室蘭工大の鎌田先生の新在来木造構法です。先生は、壁体内の気流をなくすると内部結露がなくなり断熱材の性能も十分発揮されるとこの工法の普及に尽力されました。

我が家が建てられたころはそんな工法も理屈もわかっていない大工さんも多く、やはり床下から天井の上まで風が通りぬけるようになってました。壁の中を空気が走らぬように入れる気流止めなどなく、また、それが当時の普通だったんですね。少し勉強すれば随分変わっていたのでしょうが、やはり、きちんとすることは面倒だったんでしょう。大工さん泣かせはUBの床だけではなかったようです。もっとも、改修する大工さんも大変ですが・・・

この改修の際、活躍したのが鎌田先生の考案による気流止めで、ビニール袋の中で圧縮されたグラスウールを間仕切り壁の上部に入れ、膨らませると隙間が充填されるものでした。

在来工法でも、現在は鎌田先生を中心とする新住協(一般社団法人 新木造住宅技術研究協議会)のメンバーらにおける施工(新在来木造構法)は十分な性能を出していますし、下手な2×4工法ではずっと性能は落ちています。

新築はよいのですが、以前の在来工法で建てられた木造住宅も、気流止めをはじめとする新在来木造構法の要素を取り入れることによってZEH化が可能になります。なかなか大変な工事でしたが、大工さんご苦労様でした。残念ながら改修時には父はすでに他界、仏間でやっと暖かく眠っていることでしょう。合掌。