北海道ならではの住宅の進化とは?

現場にていろいろなことをチェックし考えていくと、知恵熱が出てしまいそうなゼッツです。

冬になると、当然寒いので暖かい家が必要ですし、夏の日差しを浴びるとクーラーがほしいと思いますね。でも、北海道の家づくりはやはり本州以南とはいろいろ違ってきますから、建築の常識って北海道版がほしいくらいです。

たとえば、北海道で住宅地を選ぶ場合、やはり東南の角地が好まれ価格も他より高額の角地の中でも一番高い設定になっています。これはなぜかというと、冬の東南からの日差しを求めることと、道路に面した玄関前の雪解けが良いという北国ならではのメリットがあります。

私が学生だった頃の授業では、住宅は北面道路の宅地が良いということでした。道路側に玄関、反対側の居間などの私的空間は必然的に南側になりプライバシーが保てると習いました。よくTVのドラマなどで居間に面した縁側から日差しが差し込むというシーンがあったと思います。

でも、北海道の場合、ちょっと違いますよね。南側に道路があればそれだけ日差しを遮るものが少なく、玄関前の雪も早く溶けます。ただ、玄関と居間などの南面の部屋(窓)が同じ面なので少々間取りに苦労します。

また、本州以南では梅雨があり湿気に対する配慮が多くあります。縁側などもそうですが、開口部を多く作ることによって風通しを良くするのが知恵だったのだろうと思います。冬は、寒いといってもこたつなどで暖が取れてしまう程度なので、本州の家にお邪魔すると結構寒かったりしますよね。

北海道では、とても寒いのが当たり前ですからストーブも発達しましたし、断熱を重視し大きな開口部は作らず、といった工夫がなされてきました。昭和の初めころか、氷屋さんの氷を保存していた古い倉庫などを解体すると壁の中におがくずが入っていたりします。グラスウール(GW)のない時代にもいろいろ工夫があったんですね。おかげで冬は半袖でビール?

ところで、湿気のことですが、住宅にGWが使われるようになると当時も当然ながら結露の被害があちこちで出てきて、この結露対策が寒地の住宅の一大テーマになったことがありました。(今でもか?)床下や壁の中にもぐりこんだ湿気がナミダタケなどを発生させ、建物の柱や土台まで腐らさせていました。

この時、建物の室内側に防湿層であるビニールフィルムを張って壁体に湿気が入り込むのを防止し、また、湿った壁体を乾燥するためと称して、外壁側に通気層(現在は、通気層はサイディング保護のため?)を設ける工夫がなされてきました。学生時代は、室内側の防湿フィルムによって、室内の湿度ある空気をそのまま壁体に入り込まないような施工が望まれると勉強しました。

しかし残念ながら、いかに完璧に防湿フィルムを張ろうにも、在来工法では柱や間柱が天井よりも上に伸びてうまく張れませんでしたし、上手く張れてもコンセントのボックスなどを取り付けるとそこで防湿層が切れてしまいます。

結果的にこれをどう解決したかというと、それは気密です。内壁側の防湿層はもちろん、外壁側に構造用パネル(これは耐震性にも貢献してます)を張る合板気密工法など、いろいろな工夫で壁内の気流がなくなり湿気が入り込みづらくなったといえます。

そもそも、布団やGWなどがなぜ暖かいかというと綿状の中の空気がそこにとどまって熱を逃がさないからで、普通のシャツよりセーターのほうが暖かいし、セーターとシャツを合わせ着するなど実感としては皆知っていることですね。

高断熱・高気密とよく言いますが、この気密を十分に施工するのが高断熱のポイントですし、また、気密工法がやりやすいのは、なんといっても2×4工法なのだと改めて思いました。そして、今や高性能サッシやガラスのおかげで、テラスへの大きな窓のある居間が問題なくできるようになりました。

北海道の家は、もはや先進的な経過と工法を持っていて全国に普及しています。さらにZEH、ゼロエネルギー住宅となったスマートハウスが本流となりつつあり、室温だけでなく、湿度もスマートハウスが管理することが望まれる時代です。

裏庭があって縁側で日向ぼっこをする、という絵も素敵ですが、やっぱり、「真冬でも半袖でビール!」かな!